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「果てしなく続くブラジリアン柔術(仮)」の撮影は順調に進んでおります。

本作品では技術名称の制定も行っています。柔術のテクニックは、同じ技術であっても、ある先生はAガードと呼び、ある地方ではBガードと呼ばれている。そのような状況が長年続いてきました。公式技術名称はIBJJFすら制定しておりませんので、これは仕方ありません。ですから私としては、少なくともトライフォースの中だけでも通用する共通言語を作りたいと考えました。

技術や技術論を語る上では、共通言語が不可欠だと思います。「指導者と指導者」、「指導者と生徒」、「生徒と生徒」、この3つのラインで同じ技術名称を共有出来れば、道場としてのレベルも飛躍的にアップ出来ると考えています。たとえばAガードという名称が出た際に、その名称からイメージされるテクニックの認識が、それらのライン間で速やかに一致すれば、Aに対するディフェンスや、Aを習得していることを前提とした応用テクニックBについて、教えたり学んだりすることがシームレスに行えるようになります。

現状のTFのクラスフォーマットでは、なかなか先の先の技術まで突っ込んだ指導が出来ないというジレンマを長年感じています。ある程度以上のレベルの応用技術は、全体練習では教えることは出来ず、各自への個別指導という方法を取らざるを得ません。もちろん究極的な領域に関しては個別指導が結局必要なのですが、前提となる基礎知識を揃えることにより、全体練習においても、少なくとも現状よりは先のステージに踏み込みたいと考えています。

また現在流通している多くの技術名称は、主として柔道からの借り物であることも、柔術家としては寂しく思っていました。柔術は初期柔道の子供(または生き別れの兄弟?)のようなものですが、80年以上の長きに渡ってブラジルで独自の進化を遂げたことも事実です。それならば、競技としてのアイデンティティーを確立する為に、柔道用語に頼らない表現を多く用いるべきではないかと思っています。

現在親しまれている俗称の中には、中井先生や私が便宜的に命名したものが多くあります。例えばフックガード、たとえばヒップスロー、海外ではそのように認識されていない技術名称の数々が、日本柔術界の隅々まで浸透してしまっています。ワンハンドチョーク等の名称もトライフォースではかなり親しまれていますが、「はじめてのBJJ」を作る時に私が思いつきで考案しただけでした。色々な事をそろそろ正していきたい思います。

技術名称を制定するに当たって、ベースとなる言語は英語としました。次いでポルトガル語を、どうしても必要な場合は日本語も使用しています。書籍には英語のカタカナ読みが記載される事になります。これだけグローバル化した競技ですし、国際交流も盛んです。TFのクラスにも外国人が参加しない日はありません。今後も多くの弟子達が海外で試合をしたり、海外の道場で修業をすることになるでしょう。指導者にとっても、生徒にとっても、この先の柔術の行き着く地点を考えれば、自ずと英語ベースで考える必要があります。

名称の選定に当たっては、以下の優先順位に基づきました。

1.国際的にすでに認知されている名称がある場合は、そのまま採用する。

2.国際的に2,3個の代表的な俗称が競合している場合は、そのいずれかを採用する。

3.国際的に俗称が氾濫し、どれも決定力を欠く場合は、適当な名称を考案する。

4.3の考案に際しては、固有名詞を避け、人間の体の部位や動作を表すシンプルな言葉で極力表現する。

候補名称が出揃った時点で、外国人会員のダニエルに監修を要請し、検証してもらいました。その結果、文法的にも違和感のない単語を選択出来たと思っています。ワッショイスイープとかパンピングアイアンとか、そういった名称は一切ありません。もちろんハヤカワチョークなどもありません。私ごときが考えた技など、どうせ100年くらい前にも誰かが気づいていたはずです。その記録がないだけで。

それでは今回はこの辺で。